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  • 投稿 2026/02/05
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20秒で理解する反射

反射の格安販売店紹介!多くの注目を浴びてる注目品になりつつあります


読み手に恐怖を与えるにはどのように書いたら良いか、まさにそのお手本ともいうべき作品が江戸川乱歩の作品「人間椅子」である。

しかもこの物語の中で多大なる恐怖を与えられるのは、一般読者の側ではなくて作家本人であるというのが、また内容的に面白いわけである。

この物語の主人公である佳子は、横浜市郊外にある豪邸に住んでいた。

彼女の夫は外務省で書記官をしており、また彼女自身は閨秀作家としてそれなりの知名度を獲得していた。

この日も夫の登庁を見送ると自分の書斎に入って執筆の準備をするのだった。

彼女は最初に彼女のために送られてきた夥しい数のファンレターの内容を確認することから始めた。

これは彼女の優しい心遣いによるもので、どんなに形式張ってつまらぬ文句を並び立てた手紙であっても、一応、内容をひと通り確認することが日課となっていたのである。

この日も一葉の葉書と封筒を二枚検め終えると、最後に嵩高い原稿の束に取り掛かった。

このように自作の原稿を送りつけてプロの作家に読んでもらおうとするファンも中には居るのだが、これを読み出すと際限がないので、佳子はせめてタイトルだけでもと思い一応目を通してみた。

不思議なことに、原稿の冒頭には表題や署名は一切書かれてなく、ただ「奥様」とだけ書かれてあった。

まるで告白文のようなこの手紙に、得体の知れない気味の悪さを感じつつも、彼女持ち前の好奇心の方が優ってしまい、佳子は図らずも先へと読み進めるのであった。

手紙の主ははじめに不躾な手紙を送ったことに対して幾重にも詫びを入れながら、自分が犯した罪について時系列に少しずつ詳らかにしていく。

手紙の主は家具職人をしている男で、彼は自分の顔に強いコンプレックスを持っており、普段は陽の当たらない場所で椅子作りに専念しているという。

醜い容貌ゆえに何度も打ちひしがれ卑屈になっていた男であったが、家具職人としての腕前は相当なものであり、どんな難しい註文にも必ず応じ、とくに高級椅子の製作を依頼される事が多かった。

彼は椅子を作成し終えると、かならず自分で座ってみてその座り心地を確認するのだった。

そして、その椅子が置かれるであろう豪邸の様子を思い描きながら、自分がその豪邸の主人になったつもりで美しい恋人と取り留めもない会話を交わす様子を妄想しながら悦に入るのである。

これらは果敢ない妄想に過ぎないと思いつつも、現実逃避のため次第に増長していき、遂には突拍子もない或る計画へと移っていくのであった。

きっかけは、横浜市内にある外国人専用のホテルからの依頼であった。
男はこの依頼を引き受けて、長い作成期間の果てに、これまでで最高傑作ともいうべき立派な革張りの肘掛椅子を完成させる。

ふっくらとしたクッションの効き工合や、表面に貼られた鞣革の肌触り、背凭れの絶妙な傾斜や、肘掛のデリケートな曲線。これらが渾然一体となって座る者に贅沢な安らぎを与えるのであった。

作成した本人でさえも驚くような完成度の高さに、この椅子を手放したくないと思うようになった男は、ある荒唐無稽な、そして世にもおぞましい計画を立てるのである。

それは、椅子の内部にある空洞に潜り込んで、その中で生活をするというトンデモナイものであった。

さっそく、男はその椅子の内部に細工を加え、座り手の尻がちょうど男の膝の上に当たるようにしたり、長時間中に居ても呼吸がしやすい様に外から見えないような隙間を開けたり、頭が入る部分の脇に小さな棚を付けて、水筒や食料を持ち込めるようにしたりと、椅子の中で生活できるように段取りを整えるのであった。

そして、その椅子は男が中に入った状態でホテルのラウンジに運び込まれ、こうして世にも奇妙な椅子の中の生活が始まるのである。

さて、男の当初の目的というのは、椅子の中で誰にも見つからないように隠れ、時々外へこっそりと出てはホテルの居室から金品を盗み取るというものであった。

こうして金品が盗み出されるたびに、ホテル内ではてんやわんやの大騒ぎが巻き起こるわけだが、当の本人は椅子の中に隠れてその様子を満足そうに聞き入るのだった。

しかし、そんな盗みの趣味もそのうちに忘れ去られてしまう。
男が見つけた新しい趣味というのは、まさしく彼自身椅子に成り切るというものであった。

皮一枚を隔てて、この椅子に座る人間のぬくもりを肌で感じる事により、これまでその醜い容貌ゆえに人との交わりを避けてきた男にとって、ある種の快感を獲得する事が出来たのである。

とくに女性と間接的に肌を接する感覚は彼に性的な亢奮をもたらした。何も知らずに無防備に座っている女性を椅子の中から抱きしめたり、首筋に接吻したりしてその邪な欲望を満たしたのであった。

ところが、そんな椅子の生活にも突然転機が訪れる。

これまで外国人経営者によって運営されてきたこのホテルが人手に渡ることになり、それとともに此の椅子も売り払われる事になったのである。

こうして、長らく住み慣れたホテルを後にする事になったわけだが、この椅子の出来栄えの高さにより、まもなくして新たな買い手が現れた。

椅子が運ばれた先は横浜市内にある官吏の邸宅で、そこの書斎に置かれる事になったのである。

男の手紙によれば、新たな椅子の使用者は官吏である夫ではなく、むしろ若くて美しい夫人の方であったらしい。

これまでは騒がしいホテルのラウンジで不特定多数の外国人旅行客の相手をしてきたが、今度は静かな邸宅の書斎で美しいご婦人と毎日のように皮一枚を隔てて肌を接する日々を送るようになったのである。

そして、男はやがてこの夫人に対して、あろうことかある種の恋心を抱くようになった。

男は夫人のニーズに応えるかのごとく、夫人が椅子に身を投げ出した時は、出来るだけ優しくその身体を包み込むように受け止め、また、彼女が居眠りを始めると男は膝を幽かにゆすって揺籃のごとく彼女の快眠を助けたのであった。

これほどまでに甲斐甲斐しく椅子という立場で夫人をサポートしてきた彼は、最終的に大それた願望を抱くようになる。

それは夫人の顔を一目見たいという願望であり、そこには椅子ではなく、一人の人間として彼女に自分の存在を認知してもらいたいという強い思いがあった訳である。

そして、男は末筆にその恋い焦がれた相手こそ、何を隠そうこの手紙の送り主、すなわち佳子であることを告白するのだった。

また手紙には、もし佳子が面会を望むのであれば、書斎の窓の撫子の鉢植にハンカチを巻き付けてサインを出して欲しいと書かれていたが、それを読むや否や佳子は反射的に書斎から飛び出していた事は言うまでもない。

彼女はその一連の男の告白に身体の芯から戦慄していたのである。

しかし、事ここに至り、彼女はその後何をすべきか思い悩んでいた。
まさか、椅子の中を自分で確認する事など恐ろしくて到底出来そうになかった。

佳子はただただ身を震わせてオロオロするばかりであったが、そんな中、女中が一通の封書を持ってきたのである。

封書の字体が、あの戦慄の原稿と同じ筆跡だったので、ふたたび驚きに打たれ、開封しようかそのまま破り捨てようか迷った挙句、最終的にビクビクしながら文面を読み始めた佳子。

そこに書かれていたのは、ある種の詫び文であった。

すなわち、一連の原稿は送り主の拙い創作であり、この文章の題名を「人間椅子」と名付けたいと書かれてあったのである。


現実か創作か、その真相が読み手である佳子にとってまさに一大事であったことは言うまでもない。

そして、この不思議な物語をとおして真の読み手である我々もまた、佳子同様にハラハラさせられるのである。

恐怖というのは、その恐怖がいよいよ自分の身に降りかかろうとする当にその刹那に頂点に達する訳であり、そこらへん書き方の妙が江戸川乱歩の力量の高さを如実に伝えていると言えるだろう。

しかし、想像をめぐらしてみると、佳子にこの奇妙な原稿を送りつけた人物の正体というのは実際のところ誰だったのだろうか?

少なくても犯人は、佳子の書斎の間取りについてよく知っている人物であるような気がする。

彼女が立派な革張り肘掛椅子を愛用している事実を知らなくては、そもそも「人間椅子」と題された創作を送りつける意味がないではないか。

しかも、書斎の窓際に撫子の鉢植が置いてあることを知っている人物というのは、佳子にかなり近い存在でなければ分かり得ない話である。

私個人の推理では、犯人は佳子の夫ではないかと睨んでいる。

閨秀作家として売れ始め、創作活動に没頭するあまり家事や夫に対する接し方がお座なりになり、それを苦々しく感じていた夫が一度女房を懲らしめてやろうと書いたとすれば一応筋が通るように気がするからだ。

これが仮に事実だとすると、本当に文才があるのは、作家である女房よりも、むしろ旦那の方かもしれない。


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反射豆知識


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本日はON(大宮)

 

 

 

 

 

 

カキ氷登場人物紹介 →  

 

 

 

 

 

 

 

side A   + ●side N   + side O

 

 

side A


 

 



「85」

「78・・」

「90ジャスト」

「ギリ80・・・」

「あ、90越えた!」

「まじで?どこ?なんでお前ばっかでっかいの見つけるの?俺なビミョーなデカさばっかなんだけど」

「見つけてっておっぱいが呼ぶんだもん、ね、あそこ・・・、こっち来る、ほら、黄色いビキニの」

「・・・雅紀、でかした、あのビキニの面積は今季最少だっ」

「でしょ、でしょ、あの子かなりスタイルいいよ、声かけよっかなー」

「バッカ!俺だ、俺のアバンチュールを邪魔するなよ、せっかく大学生の夏なんだから」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


俺の肩を組む翔ちゃんの腕に力が入る。
高3の俺にはひと夏の恋の権利がないってこと?翔ちゃん、ほんとリア充に命懸けてるなあ。
青い海、白い砂浜、どこまでも続くビーチにはカワイイ女の子がいっぱい。

浜辺のカトレアのようなビーチパラソルも、波間にちりばめられたビーズのようなフロートも、

いやおうなしにテンションを上げてくれる。

「サマーハウス うみかぜ」のお客さんが途切れた隙を見つけては、目の前に遠慮なく行き交うビキニを品定めする俺たちに、夏の日差しが燦々と照りつける。

頭にタオルを巻いた翔ちゃんは貸し出し専用のフロートに空気を入れていたはずなのに、目の前を通り過ぎるたわわな果実達につられて手がお留守だ。

そんなとき、必ず「彼」に見つかるのが、翔ちゃんの残念なところで・・・


「兄ちゃん!なにやってんのっ、お客さん来てるよ!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 



ホラ来た、俺たちのカワイイ仔犬ちゃん。
サクサクッと小走りに砂を踏む音が、背中でぴたりと止まる。

その瞬間黄色いフリルビキニは悠然と俺たちの目の前を通り過ぎた。
ちらっと肩越しの視線、ゆれるピアス。
利発そうな口元が一瞬かすかにほころんだのを俺は見逃さないよ。

 

 

 


 

 

 

 

 



「わ!カズ!お前フロアはどうしたよっ、あっちいけ!」

「ボディーボードのお客さん来てるんだってば、ほら戻って!」


ずっとやってましたとばかりにフロートのポンプをしゅこしゅこ動かす翔ちゃんは、名残惜しそうに黄色いビキニの背中を見送った。俺はニノちゃんに怒られながら貸しボートの持ち場へ戻る翔ちゃんに、ぴらぴらと手を振ってからフリルビキニのその子に近づく。


「ねえ」

「・・・?」

「これ、あそこのサービス券。俺ビール売ってるからおいでよ」


腰履きの短パンからぴらっとチケットを取り出して、その子の肩のストラップに挟む。エアリーな髪の先を眺めながら、海の家「かみかぜ」を指さした。
白い首筋からマリンシトラスのいい香りがして潮風に混ざる、恋の匂いだ、きゅんとしちゃうな。

さっき翔ちゃんが声をかける寸前、
俺を見たの知ってるんだ、だからおいで?


「2階で呑まない?俺ひとりで休憩なんだよね」


はにかむ彼女は思った通り笑顔が絶品で・・・。
小首を傾げると、細い指先でストラップからチケットを外し、丁寧に半分に折りたたんだ。


「あたし、呑めないの。呑んだら虫が寄りやすくなるでしょ?」

「へえ、用心深いんだね。もったいないなー」

「酔っちゃったら、いい男かどうかもわかんなくなるしね」

「じゃあ、ジュースにしようよ、そしたら俺がいい男かどうかわかるよ?」


ね?とこちらから笑顔を作れば、素直に白い歯を見せる彼女。

髪を掻き上げる仕草、
指先のネイルに並んだ小さなストーンの遊び心、
水着の腰から微妙に見える小さなタトゥーも、ひと夏の恋、ううん、今だけの遊びを理解できるお年頃。
その辺のJKとは違う落ち着きとあしらいが、大人の女って感じで。
俺はそのほうがいいんだけど、甘えられるから。



「ありがとう。呑みたくなったら自分で払うわ、またね」


たたんだチケットを可憐な指先で俺の短パンのウエストにそっと挟むと、彼女は微笑んで離れて行った。


「・・・毎度あり」



 

 

 

 


潮風に吹かれ頬のそばで暴れる髪を耳にかけると、俺はニヤリと笑って「かみかぜ」を振り返る。
ニノちゃんが呼びに来た通り、店は再びごった返していた。
俺の持ち場は「かみかぜ」入り口、ドリンククーラー全般。
そこを見れば松本が必死に客をさばいていた。
大きな目がすでに俺を捉えて睨んでくる、ああ、やっちゃったかなぁ・・・松本が怒るとメンドクサイんだよね。


「松本、ごめんね」

「てめーのバイト代、半分寄越せよ!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


言い捨てて立ち去る松本をフォローする間もなく、俺に向かって差し出される金、金、金。
さっきのビキニあの子が現れるまでは仕事仕事・・・。


 

 

 

 



 

 



side N






「カズ!どうっ?」

「あ、潤くんっ、ええと、これが3番で、こっちが7番」


僕の答えを聞いてちらっとフロアに目線を走らせると、潤くんはボードにくっ付けられたオーダー表を何枚かはぎ取った。
兄ちゃんを呼びに行くために僕が持ち場を離れたあと、潤くんも相葉先輩の代わりにドリンククーラーに行っていたようで、戻った僕たちをたくさんのオーダーが待っていた。


「違う、7番もう出てるから」

「え、ほんと?じゃあ、この焼きそば・・・、」

「それ5番じゃね?ほらコレ上海焼きそばじゃん。それ俺行くよ、カズは2番テーブル片して!」

「あ、ありがと・・、」

「皿重いから、気を付けろ。持てなかったら2回に分けていいから」

「うん」


潤くんは風の速さでお冷を人数分入れると、お盆に焼きそばを2つのっけた。僕は濡れたテーブル布巾と大きな銀のお盆を掴んで急いで2番テーブルへ行く。

重い焼きそば用の楕円の皿を一番下にして、使われた取り皿を何枚かかき集める。空のビール瓶を3本まとめてお盆に乗せてそれらを一気に持ち上げる。重心が動かないようにバランスを取って洗い場へ運び、水がたっぷり張ってあるシンクへと皿を突っ込んだ。

そしてビール瓶を足元へ、これはあとで裏へ持っていく。

またテーブルへと戻って布巾でそれを丁寧に拭きあげてから、お箸やお手拭きの入ったトレイにソースが飛んでいないか確認して、メニューの表紙も軽く拭けば完了。

椅子の座面の汚れをチェックしてその背を掴みガタガタとつっこんでいると、新しいお客さんが入って来た。


「いらっしゃいませ!」

「いらっしゃいませ!」

 

 

 

 


 

 

 

 



素早く反応する潤くんの元気な声と、僕が出せる精一杯大きな声を合わせて迎え入れる。
すでにオーダー表を手にした潤くんが笑ってスタンバイしているのを見て、僕は洗い場へ入った。
足に当たったビールの空き瓶がフラリと倒れ、地面に転がる寸前になんとかキャッチ!


「・・・ふーっ・・」


3本の空瓶をしゃがんで掴み、裏の入口へと運ぶ。
小走りで戻って水栓を捻り、勢いよく出てくる水の中に手を突っ込む。汚れの弛んだ皿を、ぶくぶくに泡立てたスポンジで撫でていく・・・。

家でもやらない皿洗い、まさかこんなに忙しいなんて・・・、僕は額の汗を腕で拭って、全力疾走のあとのように短い呼吸を繰り返す。


「疲れたか」

「・・えっ」


声の主はシンクから対角に離れたコンロでもくもくと焼きそばを焼く大野さんだった。
白いTシャツを肩まで捲り上げて、一心に金ヘラを動かしている。


「だ、大丈夫っ・・・」

「うそつけ、ヘロヘロじゃねぇか」


笑いを含んだ声に赤面する。
キッチンは死ぬほど暑かった。

僕の中で経験したことのある一番の暑さは野球の応援スタンドくらいで、こんな蒸し風呂並の暑さは初めてに近い。
大野さんの横顔を見れば玉のような汗が滲んでいた。
捩りハチマキよろしく巻かれた黄色いタオルも色が変わっていて、焼き場の壮絶な暑さを物語っている。
僕は赤くなった頬をごまかすようにスポンジで皿に張り付いたソースを何度も掻き回した。


「大野さんは?大丈夫ですか?」

「・・・なぁ、上海も富士宮も横手もそんな違うか」

「え?」

「焼きそばだよ、なんでこんな種類があんだ?ミーゴレンってどこの食いもんだよ」



大野さんは目の前のレシピ表を指で辿ると、
よしと呟いて一呼吸置くと、高速でソバの煽りに入った。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


うわぁ・・・


こんがり焼けた肌と、動くたびに逞しく浮き出る大野さんの筋肉。



カッコイイ・・・


ぽーっとなって見とれていると、潤くんが顔を出す。


「カズ!ビール出るよ、1本」

「うん、了解」


手を洗って巨大な冷蔵庫へ回りビールを1本取り出すと、僕は再びフロアへ出た。
大野さんも頑張ってる、僕も頑張ろう。
でも、もう足が棒のようで・・・、へろへろ・・・






 




side O





熱い。

熱い。

熱い・・・・・




滴る汗を鉄板へ零さないように何度も拭えば、
ヘラの先から飛んだソースが自分の腕に張り付いた。


「・・・っち!」

「気を付けろ」


そばのじいさんがギロッと睨んできて、低い声で言い放つ。
じいさん、変われよ・・・、じいさん担当のイカ焼きはほとんど出ねぇじゃねえか。
アンタ長年これやってきたんだろ、なんで俺がこっちなんだよ。
俺は大きなヘラで豚肉をカンカン!っとぶつ切りにすると、もやしと合わせて煽った。


―カズが海の家でバイトをする、そう聞いたのは7月の初めだった。


梅雨のじめじめとした部屋の中、扇風機を回しながら俺は釣りの雑誌を、カズはゲームの攻略本を読んでいた。

たまにコロリと寝転がって俺の脇へと鼻先を埋め甘えてくるカズの頭を適当に撫でながら、

実にまったりとした午後を過ごしていたときに、カズが思いついたように云ったのだ。


―大野さん、僕、海の家でバイトするんです、遊びに来ませんか?


会社の夏休みをとるためにちょうど希望を出すころで、聞けば翔ちゃんと相葉、松本まで一緒だと言う。
俺は二つ返事で3日間の夏休みをその日に定めた。


「大野さんっ、上海3つです!おじさん、イカ焼きひとつ!」

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 


カズの通る声がキッチンへと射しこむ。


「あいよ・・」


おいおい、ここは中国か?
俺は朝から嫌というほど上海を焼きまくってんぞ。
じいさんが、ゆっくり腰を上げるのを見て俺はため息をついた。

カズと一緒に電車に揺られて稲毛まで来てみれば、老齢の気難しそうなじいさんがここで一人焼き場に立っていた。バイトを頼んできたのは翔ちゃんと同じ大学に通う孫娘。

さすがに若い男4人を雇えばコト足りるだろうと思っていたらしいが、今年建物をリニューアルしたこの「かみかぜ」目当てに例年以上の客が押し寄せていることを知る。バルやグランピングを思わせるようなこじゃれた設えの店が並ぶ中、昔ながらの海の家の造りは逆に目立ち、目玉メニューの『稲毛で世界の焼きそばが食べられる!』が大盛況だそうで・・・。

とりわけ花火大会を含むこの3日間は混雑がピークになるとあり、目が回る忙しさになっている。

初日の昨日。

翔ちゃんに拝み倒されてじいさんと焼き場に入る、俺が立てるのはここしかない。

さすがに副業禁止の新入社員がうろうろとホールに居てはまずいだろ?と、何となく翔ちゃんに丸め込まれた感も否めない。

でもよかった、まさかと思うがカズをこんな場所には立たせられない。

熱いわ、油は跳ねるわ・・・・


「できたぞ」


俺は激アツの上海焼きそばを3枚の皿に移し終えると、配膳台へ乗せた。
それを待ち構えていた松本が手早く取って、フロアの奥へと運んでいく。


アイツすげぇな・・・、

嫌そうにしてたのにめっちゃイキイキしてるじゃん。


―潤くんはアスリートだから、なんでも負けたくないんだよね


カズがいつも松本を評する時に使う言葉を思い浮かべる、松本はホントに粘り強い。
ちらっと時計を見て気合を入れ直す。
閉店は16時、あと2時間だ。

そろそろ昼飯の客も減り、出るのはビールとちょっとしたツマミ、それと孫娘が担当しているかき氷ばかりになってくるはずで・・そうなればじいさんと二人でこなせるらしい。それも2日目になれば見えてきた。

俺は一旦止まったオーダーに心底安堵しながら焼き場の隅の椅子に腰かけた。

早々にイカ焼きを作り終えたじいさんは咥えたタバコを揺らしながらラジオに聴き入っている。全編英語のラジオ、米軍基地のラジオかな・・・。


ふー、あと一日かぁ・・・、明日ぐらい、海に入りてぇなぁ・・
カズの水着姿も見てねぇし。



びっしょりと濡れて重くなったタオルを、頭と首、両方から外して目を閉じた。


海・・・

 

 

 

 

 

 

 


―大野さぁん・・・

 

 


スマーフの柄が派手についた海パンを穿くカズが、大きく手を振る姿が目に浮かぶ。
先に入った俺を追いかけて何度も水をかくけどちっとも進みはしない。
バタバタと手足を動かしていい加減疲れたころ、俺は言うんだ、そこ、立てるぞって・・・
そしたらカズは恥ずかしがって真っ赤になる、それこそ鎖骨の辺りまで・・、可愛いだろうよ、なぁ?

 


「・・・・。」

 


よし、明日は何が何でも昼から泳ぐぞ・・・。
カズを浮き輪に突っ込んで引いて泳いで、ちょっと遠くまで出れば誰も居なくて・・・
浮き輪の下からカズを抱きしめて・・・ふは、最高じゃねーかよ・・・


「・・・っ、僕、男ですってばっ」


カズの声がして、俺パチッと目を開けた。

首を伸ばせばフロアに居るカズが、お盆を胸に抱いて客を相手に焦っている。
立ち上がりかけた時、松本が踵を返してカズの方へ戻ってくるのが見え、俺はまた腰を下ろした。


「またまた、ウソばっか。なぁ、バイト終わったら一緒に泳がない?」

「だから!僕は男ですっ」

「だーかーらー、俺、キミみたいなボーイッシュなコ、すげえタイプなんだよねー」

「なっ、ボーイッシュッ・・・、」


去年から「男らしくなる」ことがテーマのカズにはショックなのか、真っ赤な顔で否定し続ける。
よく見ればめったにかかない汗までが遠目にも見えた。
らちがあかないと松本が割って入ってくれそうなのでとりあえず見守ることにして・・・。

あの男、ちょっと酔ってるな、まぁ、呑んだらカズの可愛さが女に見えても仕方ねぇか、俺は鼻の下を指で擦ると苦笑いした。


「仕事中なのですいません。こちら、熱いうちにどうぞ」

 

 

 

 


 

 

 

 


松本がカズを後ろ手にかばうように引き寄せると、
酔狂な客は手を伸ばしてカズを掴もうとする。

・・・、俺は飛び出せるように腰を浮かした。

気のせいか、じいさんのラジオの音が小さくなった気がする。


「待てよ!俺はこのコと喋ってんだ」


男の手がカズを掠める。
松本が自分の背中へと完全にカズを隠すのとほぼ同時に、伸ばされた男の手は誰かに掴まれた。


「兄ちゃんっ」

「・・・ちょっと!あの、コイツ!俺の弟なんスけど、何か用っスかね」

「んだよっ、離せよ!」

 

 

 

 

 



 

 

 

 


おいおい、翔ちゃん、トップギアで突っ込んできてめっちゃ怖いオーラ出てんぞ。
ほぼ金髪で巻き舌で、ピアスで、見えやしないがおまけのへそピで、このカラコン入りの大きな目にまっすぐ睨まれたらもう。

俺は笑いを堪えるのに下唇を噛みしめる。


「・・いや、男?・・まじで?だったらそりゃ俺は・・・すまん、酔ってるな、俺」


牙を抜かれたように男はシュンとなり、一瞬で手を引っ込めた。
バツが悪そうに翔ちゃんと松本を交互に見れば、ヘラリと笑って頭を掻く。
翔ちゃんは爽やかな笑顔に戻り、ペコっと頭を下げた。


「はは!ですよね!もう、お兄さん驚かさないでくださいよー、コイツよく見てくださいよ、男っスよ?」

「・・・いや、ヘンなこと言っちゃって」

「そんだけ可愛いってことっスよね!俺、兄貴として鼻が高いスわー、あ、空っスね、俺注ぎます」


満面の笑みで、男の前のビール瓶を手に取り小さなコップへドクドク注ぐ。
俺は腰を下ろして鼻からひとつ息を吐き、首を伸ばしカズを見た。

よっぽど恥ずかしかったのか悔しいのか・・・
全身を真っ赤にしてカズは松本の肩に手を添えている。



真っ赤・・・・



真っ赤・・・・?




カズの黒髪がこくんと後ろに揺れ、肩から手が外れる。

真っ赤な顔がふいに天井を向いた。




おい・・・

 

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 

 

 


「・・・っカズ!」






俺は反射的に椅子を蹴って焼き場を飛び出した。
目を閉じたまま崩れ落ちるカズを間一髪で受け止め、床に膝をつく。



「カズッ」

「カズ?!」



翔ちゃんと松本が振り返った時には、カズは俺の腕の中だった。
みんなの呼びかけにわずかに薄目を開ける。
大丈夫、意識はある。
首の後ろが燃えるように熱くて、汗が粘っこい。


「あ・・・、ごめ、なさ・・、ちょっと、フラフラし、て」

「カズ?!大丈夫か?」


絞り出したカズの声に、翔ちゃんの顔が悲壮に歪んだ。
店内にいるの客はもうわずかとはいえ、浴びる視線は何かとマズイ。
俺はカズを抱え直すと横抱きにして一気に持ち上げた。


 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

明日の投稿を予定しています(*'▽')    ・ あるひ

 

 

 

 

 

 



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