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アリィ以外のスキル発動瑞樹に促されて中に入ろうとした時、ドアを開けてくれた女の子がこっちを見て目をこするようにしたかと思うと目を見開いてもう一度美月を見た。美月も女の子を見たが彼女は美月ではなく美月の後ろの方を凝視しているような感じだったので無意識に美月も後ろを振り返ったが誰の姿も見えなかった。
「お待たせ」
瑞樹がそう言って中に入るとあの吉岡がリビングのソファーに座ったままこちらを見た。
「特に待ってはいない」
そう答えながら吉岡が美月を眼鏡の奥から観察するように見る。
「まあ、どうぞ」
吉岡は美月を見てそう言うとテーブルを挟んだ自分の前のソファーを指した。瑞樹はそのまま吉岡の隣に腰を下ろす。やっぱりこの二人は付き合っているのだろうかと思う。確か吉岡は医学部に進んだと聞いている。
「あ、あのお二人は付き合っていらっしゃるんですか?」
思わずそう聞くと瑞樹は見る見るうちに顔を真っ赤にして首を横に振った。
「ま、まさか。付き合っているわけないじゃない、ね」
瑞樹が吉岡に相槌を求めるようにそう言ったが吉岡はそれには答えず美月の方を見た。
「話を聞こうか」
美月の質問などまるで聞こえなかったかのような態度だ。
「は、話って…」
美月は躊躇う様に瑞樹の顔を見る。吉岡に話しをするとは全く考えていなかった。
「大丈夫、この人、口は堅いから。私達も色んな意味で助けて貰っている」
「私達?」
私達とは真理子や杏奈の事なのだろうか、三人とも親はいないとは言っていたが誰かの助けを必要としてそうには見えないと美月は思った。そこにさっきの女の子が入ってきて吉岡を見ると視線を美月の背後に少し向けてからまた吉岡の顔を見て奥の部屋へと進んでいった。なんか変わった子だなと思った。
「あ、あの今の女の子は」
「妹の美帆だ。それより、藍田から聞いたけれど君、ご両親を火事で亡くしたんだって」
「ちょ、ちょっと、いきなりそんな、」
瑞樹が驚いた顔で吉岡を見る。
「回りくどい言い方しても一緒だろう」
「そ、そうだけど。ごめんね、美月ちゃん」
「あ、いえ」
瑞樹が信頼しているならきっと大丈夫なのだろうと思う。だけど何故か少し息苦しい。その時、突然吉岡の手が美月の方に伸びてきて美月は反射的にそれを払ってしまった。
「あ、す、済みません」
「やっぱりね、だから似ていると思ったんだ」
「何?」
瑞樹が目を丸くして吉岡を見る。
「何って、おまえも感じているんじゃないのか」
その問いに瑞樹は視線を逸らした。
「ね、ご両親が亡くなった火事の時の事って覚えているの?」
吉岡の問いを避けるように瑞樹は美月に質問してきた。今日は瑞樹に全てを話すつもりで来た。ただ吉岡が一緒だとは想像もしていなかったが。
「いえ、殆ど覚えていません…ただ、」
美月はそこで大きく息を吐いた。
「私も聞かされていなかったのですけど…実は両親は火事で死んだのではなくその前に殺されていたようです」
美月は吐き出すように一気にそう言った。その言葉に瑞樹と吉岡は顔を見合わせた。
「中学の時に両親が死んだ火事の事を調べていて分かりました。それに私には兄がいたようです。全然覚えていないんですけど、その火事の日から兄は行方不明になっているみたいです。兄は両親を殺した容疑者でもあったみたいです」
今迄誰にも話した事が無い、こんな特殊な話しを誰かにする勇気はなかった。聞けば美月自身も敬遠されるのではないかと思った。兄が容疑者だという事は殺人者が身内にいるかもしれないという事だ、それにもし兄が犯人ではなくても殺されるなんて普通じゃない、もしかしたら何か悪い事をして人に恨まれていたのかも知れない。
「お兄さんは生きているか死んでいるか今も分からないままって事なんだね」
吉岡の問いに美月は俯いたまま頷く。
「ちょっと、待ってて」
そう言うと吉岡は奥の部屋へと向かった。
「聞きに行ったのかな」
吉岡の後ろ姿を見ながら瑞樹がそう呟く。
「聞きに行った?」
「あ、ええ。さっき美帆ちゃんがあなたの後ろをじっと見ていたから」
「?」
意味が分からず美月はキョトンとした顔で瑞樹を見返す。
「あ、美帆ちゃんね、なんか人に見えないものが視える子なの」
「え?」
それは幽霊とか言ったものの事なのか。ではさっき、美月の後ろに何かが見えていたという事なのだろうか。美月は後ろを恐る恐る見てちょっと身震いする。
「それって、あの、幽霊とか…」
「あ、ああ、んー、どうかな。吉岡君の言葉を借りれば念の残像とからしいけれど」
「?」
首を傾げていると吉岡が戻ってきた。
「どうだった?何が見えるって?」
「よく分からないそうだ、多分、若い男じゃないかと言うんだけれど」
「それってもしかして行方不明のお兄さんとか」
「さあ、ね。ところで君はどうしたいの?」
「え?」
「自分の過去と向き合う覚悟はあるの。世の中には知らない方が良い事もあると思うけれど」
吉岡の言葉に美月は考える。実際、自分の過去を知りたいと思っているのかどうかよく分からないのだ。正直今のままでも特に困る事も無いように思う。だけど知りたくないのかと言えばそれも嘘になる。本当の親や兄弟の事何も知らないままというのがとても不安定な気がする。
「でも、何も分からないって不安よね…」
瑞樹がまるで自分の事のようにそう呟く。
<陰火-10へ続く>
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